メンチ・哀愁の日記

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筒井康隆「時をかける少女」感想

時をかける少女 〈新装版〉
時をかける少女 〈新装版〉
角川書店


予想外に壮大な話の飛躍にビックリ(笑)

放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。 (Amazonより転載)


この小説が世に出たのは1967年のこと。なんと40年前にもなります。冷蔵庫や洗濯機がようやく普及した時代に、これだけのSF作品を創り上げた筒井康隆氏に感服。

言葉使いは若干古さを感じさせる部分もあります。登場人物が男女問わず君付けで呼び合っていたり、句点を入れる場所がちょっと変わっていて読むテンポがずらされたり、何故この文字を平仮名で?と思うような箇所が多かったり…。「かの女」という表現は、最初「彼女」だと思わず「かのおんな」だと思ってました(笑)

しかし、本質の面白さは今でも変わりません。重厚に成り得るテーマがありながら短編の形をとっているので、アッサリ感が否めず、特別に感情を揺さぶられる物語ではありませんでしたが、読後の切なさ……というか、喪失感、そして希望は、これぞジュブナイルと言える要素ではないでしょうか。…私はどちらかといえば某夫婦を思って胸が痛みましたが、そこに本筋がおかれていないので…。

時間移動ものはSFとしては面白いのですが、どんなにうまく物語を組み立てようとしても、首を傾げてしまうような疑問は残ってしまいます。この世界にはバタフライ・エフェクトというものがあるので、どうしても矛盾が生じてしまうんです。まあ、エンターテインメント作品に対して深く突っ込むのは野暮ってものなのでしょうね。素直に楽しむべきでしょう。ドラえもんを見るときのように(笑)

「時をかける少女」と同様の面白さを再び味わってみたい方には、是非、高畑京一郎氏の「タイム・リープ」(上巻下巻)を読んでいただきたいです。進化した「時をかける少女」の物語とも言える、本作のオマージュ的作品あり、時間移動をテーマにしながら矛盾を極力減らす努力が講じられています。本作の読者であれば、ニヤリとするシーンもあるかもしれませんよ。



「時をかける少女」の文庫本には、他に2つの短編が入っていました。

1つは「悪夢の真相」。
推理小説さながらに、主人公がトラウマの原因を探っていき、とある真実に辿り着きます。なかなかスリリングな描写もあり、一気に読み終えてしまいました。3つの話の中で、一番私の好みに合っている気がしました。読み入っていると忘れてしまいがちですが、汽車が出てきたりして、ふと時代の違いを感じさせられます。

もう1つは「果てしなき多元宇宙」。
短編というか、ショートショートです。あまりに突飛な展開に思わずふき出してしまいました。こういった遊び心が、筒井氏の魅力でもあるのでしょうね。

どちらもそれなりの良作でした。

お気に入り度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)
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