メンチ・哀愁の日記

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「白い巨塔(第1巻)〜(第5巻)」山崎豊子(著)

白い巨塔〈第1巻〉
白い巨塔〈第1巻〉

電車やちょっとした空き時間を利用して読み続け、約半年をかけて読了しました。
医学の前知識等は必要ありませんが、これを読み切るには根気が要ります。
あらゆる意味で凄まじい作品でした。

この小説を読むきっかけとなったのは、テレビドラマの現代版白い巨塔でした。最後まで見終えて、是非小説も読んでみたいと思っていたところ、なんと兄が5冊とも持っていたので(笑)、借りて読みました。

医学部内での権力争いはまるで社会の縮図です。どの世界でも通じるものがあるでしょう。文体や医療技術等はさすがに古くさい印象を受けますが、人間の行いに関しては今も昔も変わりません。いや〜な部分をまざまざと見せつけられて、教授選も学術会議選ももうお腹一杯って感じです。

そんな中、里見先生の真摯な姿勢にはほんと救われます。関口弁護士とともに、佐々木庸平の遺族のため、医学会の未来のために法廷に立つ決断をします。ただ、それによって自らの立場を無くし、家族にも辛い思いをさせてしまう。。医者としての正義が、夫として、父親として正しい姿であるのかどうか、複雑な葛藤が描かれています。

並の小説家なら里見先生を主人公にしてしまうところでしょう。
しかし、主人公は悪役の財前なんです。権力を求め、腕に溺れ、他人を蹴落とし、患者をないがしろにする天才メッサー。そんな財前も、ふと故郷の母を想う時や、自らの子供に接するときには、優しさの影がちらつきます。そもそも、彼に悪役という言葉を当てはめて良いものかどうかも、はっきりと答えることが出来ません。決して患者に殺意を抱いてミスをしたわけでもないし、多くの患者を死の淵から救ってきたのも事実です。そして、罪に問われずに立場を守ることが出来れば、その先も多くの患者を救い続けられることも事実でしょう。

佐々木庸平の死が医学界にもたらす意味……3巻の終わりに、一審の判決が下されます。当初は全3巻の予定で刊行されましたが、予想以上に世間での反響が大きくて、作者も思いなおして、世論に応えて全5巻となったとのことです。あれで終わったら後味悪すぎですからね(^^;

里見先生と財前教授、対極の考え方を持ち、表立って対立しながらも、心の奥底では互いを信頼してる2人。あれこれと権威にのみ固執して画策ばかりしてきた古狸共も、最後は人として財前を想うんです。(ある奴は冷たくあしらわれる会心の結末となりましたが)
誰にとっても、辛く、苦しく、切ない物語です。

小説とテレビドラマでは細かな違いがたくさんありました。
海外で訪れる先がベルリンからアウシュビッツに変更されたり、佐々木家の商売が反物屋から弁当屋(阪神ファン)に変更されたり。(ベルリンの壁は当時ほどの重い意味を持ちませんし、いまどき反物屋で粘る遺族も厳しいものがありますからね)
大河内教授の役者さんはピッタリはまっていました。あの人以外考えられません。
驚きのキャスティングだったのは柳原。でも、テレビドラマ版の方が良い味出してると思います。最大級の見所、法廷のとあるシーンでの迫力は、小説版の性格じゃ出せなかったと思います。ただ、「るみた〜んv」「みった〜んv」なイメージが頭から離れなかったのが唯一の難点でした。(勝手に繋げる方が悪い(笑))

架空の物語であるから、「正義のために○○すべきだ」なんて強気に思ってしまうけど、、もし自分がこの小説の登場人物だったら、最初から最後まで流されて終わりだったと思います。
白い巨塔についてきちんと語ろうとすると、この数十倍は余裕でいけると思うので(笑)、キリがないのでこの辺でやめておきます(^^;

ちなみに作者の別の作品に大地の子という小説があります。NHKでドラマ化されて、知ってる人も多いと思います。ドラマには、幼いながらもかなりの衝撃を受けたことを今でも覚えてます。

お気に入り度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)
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