メンチ・哀愁の日記

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映画「小さな中国のお針子」感想

小さな中国のお針子 [GyaO]
(3月25日正午まで視聴可能)

舞台は中国、言葉も中国語、そして監督も中国人ですが、これはフランス映画です。当然、中国映画特有のプロパガンダ色は薄く、その舞台にはあくまで客観性をもった文革の影響を描くに留めています。決して体制批判を目的とした映画ではありません。


反革命分子の子息として、「再教育」のために都会から四川省の山中に送り込まれた2人の青年は、1人の女性(お針子)に出会い、互いに惹かれていきます。文字を読むこともできなかったお針子は、青年たちから知識を得、西洋文学を通して変わっていきます。

たとえばそれはバルザックやデュマの作品。かの「モンテ=クリスト伯」も、ある人物に影響を与えることとなります。(フランス人にとって、自国文学が及ぼす影響が描かれることは、最近話題の言葉で言えば一種の民族的快感を得られるんじゃないかな…。表現は悪いけど、あくまでフランス映画ですから)

青年たちは文化的優位性を盾に立ち回り、それぞれ違った形の愛をお針子に注いでいきます。特にマーの無償の心配りときたら、筆舌に尽くしがたいものがあります。


特別、衝撃の展開を迎えるような大掛かりな物語ではありませんが、終始醸し出されるノスタルジーが視聴者の心を惹きつけます。それを可能にしているのは、中国奥地の魅力をふんだんに伝える純粋な映像美です。

しかし、ゆったりと流れる美しい情景と反して、どうしても閉塞感が拭えません。おそらく、多くの日本人が私と同様の感覚に陥ってしまうことでしょう。

本当に人の心を動かすのは、そういった客観性を持った物語なのだと思います。一方に視点が偏ることなく描かれていた世界が、やがて新たな文化の礎となる某巨大プロジェクトにより……。


だからこそ中国では上映禁止になったのでしょうけど。
思想の多様な可能性を与えてしまっては都合が悪いですから。

お気に入り度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)


時間にゆとりがある時に、まったり見るのがお勧め。
……GyaOでの無料視聴期間は明後日の正午で終わってしまいますが(^^;
「華麗なる一族」で心に重しが掛かっていた私には、良い清涼剤になりました。
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